奇術研究家の大原正樹氏が、2010年に発行したレクチャーノートです。
収録作は基本的に全てカードマジックで、レギュラーデックで気軽にできるものからショーのクライマックスにふさわしいものまで、幅広く収録されています。
本書の特徴は、各項目の最後に「考察」というセクションが設けられていることです。そこでは、手順やアイデアよりも大きな意味での「狙い」や、他にも応用の利く「戦略」が、簡潔にまとめられています。理論（というよりもコンセプトと呼ぶほうが近い気がしますが）と実例がセットであることで、どんな方にもわかりやすく、面白い内容となっています。

最も注目の作品はAll Backです。レギュラーデックで行え、演者の負担も軽めです。その理由は前述した戦略によるカバーがあるおかげなのですが、ここに書かれているものはアスカニオのカバーにも通ずるものとなっています（お手元に『アスカニオのマジック』がある方はOn Misdirection（ミスディレクションについて）のセクションをご覧ください）。その意味で、本作は本格的な理論書への橋渡しとなる一冊とも言えます。

初心者の方が中級以上へステップアップするための教材として最適です。何より、文章が抜群に読みやすいので、学んでいてストレスがありません。
今回電子化するにあたり、追加アイデアも収録しています。以前物理版を購入した方にもお楽しみいただけます。
読み味はさらっと、しかし奥深い研究をご堪能いただける一冊です。

Face Up Versa
Versa Switchと同じ効果を、特徴的な準備動作や難しい動作なしで達成した技法。

Future Move Routine
３枚のカード当てですが、最後の一枚は卓上に表向きで置かれていた１枚がいつの間にか変化している、という手順。
タイトルの通り、Future Moveをフィーチャーした手順で、そこに至るまでの過程が丁寧に練り上げられています。

Ohara Count
枚数を多く見せるフォールスカウント。

Snap & Double
左右の山に配る動作の中で、１枚ないし数枚を別の山に移すことができる技法。

Snap Across
上記２つの技法を最大限に活かしたカードアクロス。

20
20枚のカードを表裏で混ぜますが、いつの間にか裏と表が分離しており、しかもそれぞれが赤と黒になっています。
セルフワーキングです。

All Back
オールバックのバリエーション。
同プロットで軽く演じられるものの中では屈指の出来栄えです。

49 Cards to Pocket
全てのカードがポケットに移動するタイプのカードトゥポケット。
Future Move Routineと同じく、クライマックスへ向けて丁寧な構築が素敵なルーティンです。

Fake Out
デックケースから普通にデックを出すと見せかけて、パームしているデックを出してしまうテクニック。

Cutter Knife
カードケースにカッターナイフでおまじないをかけると、中でデックが切断された状態になります。しかし、１枚だけ無傷のカードがあり、それが観客のカードです。

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